ベスト・オブ・脳内洗浄ムービー 大賞発表!
2007年はまさに個人制作動画の当たり年だった! 作者と視聴者が協力し合ってネットの面白さを加速させる動画シーンの中から、ネトランが超人気動画だけをピックアップ。その功績を褒めたたえちゃうぜ。国内動画ブレイクの1年を象徴するグランプリ作品は?
ネトランの3カ月連続アワード企画の締めくくりを飾るのは、2007年を代表する名作動画を決定する「ベスト・オブ・脳内洗浄ムービー」だ。1年で動画コミュニティに登場した数え切れないほどの作品の中から国内の個人作品に限って選び出し編集部と審査員が評価を行った。3回目となる今年は全ノミネート動画を「3次元」「2次元」の2部門に分け、最高の評価をされた「大賞」を筆頭に総額100万円の制作支援金を授与しちゃうぞ。
評価3項目の説明 | |
オリジナル性 | 動画の素材となる映像および内容を作者がどの程度自分の力で作り上げているかをチェックした。5点満点。既存の動画から映像を抜き出しただけのものや、流行の動画のパロディ的内容だと評価が辛くなる。 |
インパクト | 動画を見たときに受ける驚きや興奮を5段階で評価した。展開に意外性のあるものが高評価となる。ホームビデオのように偶然生まれた驚きの展開はもちろんのこと、視聴者の予想を裏切る展開を作者が狙って作り込んでいるかも注目。 |
創造性 | 主に動画の作成にかけられている技術力が5段階評価される。プロ並みの高度な動画編集能力を駆使したものが高く評価されるのはもちろんだが、動画の撮影ならびに編集作業において手間ヒマをかけているかも評価の対象となる。 |
審査員紹介 |
ツール紹介&パソコン関連雑記サイト「moewe」管理人。シンプルで軽量なツールをこよなく愛しており、それらを組み合わせて使うのが大好き。ライター的なことをやり始めて、何だかんだでもうすぐ2年を迎えそう。今回は11月号での悪用厳禁ツールアワードに続いて審査員を務めさせてもらいただくことになり非常に光栄です。 |
インターネット冒険家。ツールマニアにしてネットカルチャーマニアにして、重度のYouTube&ニコニコ動画中毒患者。今回は予定されていた●樫先生が作者急病で休載のため、急遽代役として審査員になった。最近はゲームのプレイ動画、特にレトロゲームの動画を落としてはハードディスクをあふれさせるなどの活動を地味に行っている。 |
大賞は「VOCALOID2初音ミクに『Ievan Polkka』を歌わせてみた」に決定!
合成音声ソフト「初音ミク」関連の中でも抜群の完成度を誇り、後続作へ多大な影響を与えた傑作だ。初音ミクの発売後すぐに発表されたこの動画は2006年に爆発的な流行を見せた通称「ロイツマ」と呼ばれる動画で使われているフィンランド語のポルカを、たまご氏の原画によるデフォルメ化された初音ミクが歌うMADムービーだ。
動画は初音ミク開発陣にも好意的に迎えられたほか、本家ロイツマにならってネギを振り回しながら歌うデフォルメキャラは「はちゅねミク」として認知され、さらに「初音ミクはネギを持っている」というキャラ付けまで完璧に定着させた。初音ミクの後継作『鏡音リン』には何を持たせるべきかが発売前から議論されたほど。
個性的なソフトウェア、魅力的な絵、そして従来からあるネットのネタという複数の要素をうまくミックスさせた手法は人気動画のお手本とも言えるセンスのよさだ。ニコニコ動画のみならずネット中に旋風を巻き起こした初音ミクの大ブレイクはこの動画から始まった。これぞ2007年を象徴するモンスター動画だ!
「VOCALOID2 初音ミクに『Ievan Polkka』を歌わせてみた」ベスト・オブ・脳内洗浄ムービー 大賞
(評点:
オリジナル性☆☆☆☆☆
インパクト ☆☆☆☆★
創造性 ☆☆☆☆☆)
初音ミク発売元のブログでも絶賛されている最高の動画だ。デフォルメされた初音ミクがネギを振り回しながら歌う
間奏終わりの「YO!」によって目覚めてまた歌い始める。中毒性のあるロイツマの歌と初音ミクの飽きさせないアクションで、ずっと見ていたくなる
元になったロイツマの動画はこれ。初音ミクが持っているネギのルーツだ
大賞 受賞者コメント
「このたびは大賞に選んでいただいたことにつきまして、あまりに突然のことで、何が起こっているか分からない状態ですいません。と、とにかくありがとうございます(笑)。(Otomania&たまご)」
選評
2007年の動画コンテンツに激動をもたらせたソフトことバーチャルシンガー「初音ミク」の大ブレイクとキャラクター性を決定づけたのが、この「VOCALOID2 初音ミクに『Ievan Polkka』を歌わせてみた」という動画だと言い切ってしまっても過言ではないだろう。元の動画と同じくネギを持たせたことから今や「初音ミク=ネギ」という方程式が確立され、イラストや動画、フィギュアなどの関連グッズにまでネギとともに初音ミクが登場するほどだ。ユーザーの間ではシリーズ第2弾の「鏡音リン・レン」でネギの代わりに何を持たせるかが話題になった。発売直後でまだどんなキャラなのかあいまいだった初音ミクに対して、デフォルメされた「はちゅねミク」によって的確なキャラ付けを行いニコニコ動画のみならずネット中を巻き込んだ大流行の土台を確立した功績は大きい。まさに2007年を代表する動画と言えるだろう。(☆☆☆☆☆)
2007年前半のトレンドが「おっくせんまん」であったなら、後半を飾ったのは間違いなく初音ミクだ。作曲や演奏になじみのない一般の人にも売れ、結果として音楽というジャンルのすそ野を広げた。大賞に選ばれた「VOCALOID2 初音ミクに『Ievan Polkka』を歌わせてみた」は、初音ミクの発売直後に公開され爆発的な人気を呼んだ動画。「ミクはネギを持つ」という今では公式のように思われている設定を生み出した作品だ。お仕着せのものではなく設定までもユーザーが作り上げていくのはネットならではと感じさせる。本来なら日本語を歌わせるために作られているであろう初音ミクで、ポルトガル語の原曲を再現したのも素晴らしい。キャラクターの「はちゅねミク」は「ちゅるやさん」、ネギは「ロイツマ」を踏まえて作られているがパロディの元ネタを知らなくても楽しめる。ただ見て、そして萌えればいいのだ!(☆☆☆☆☆)
動画作者と一般ユーザー、そしてニコニコ動画や初音ミク発売元のソフトウェア開発メーカーであるクリプトン・フューチャー・メディアなどの企業が、ネット上で対等な立場を守ってコンテンツを発展させていくという1つのモデルケースとなったのが「VOCALOID2 初音ミクに『Ievan Polkka』を歌わせてみた」だ。個人ユーザーが面白いものを作って次々にブームを起こすことができ、同時に企業が利益を得ることだってできるという新しい時代の到来を象徴する動画だ。初音ミクに限らず、今後は一般ユーザーが人気コンテンツを作り出す例がさらに増えていくだろう。Otomania氏やたまご氏などの先駆的なクリエイターにさらなる精力的な活動を期待するのはもちろんのことだが、ニコニコ動画やクリプトン・フューチャー・メディア社のような企業には、個人がさらによりよい作品を生み出せる環境作りを目指して企業活動をしてほしいものだ。(☆☆☆☆☆)